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2004/11/12

チョコレート    ( 1-10 )

  隣の和雄ちゃんの家の庭には大きな池があった。 中には緋鯉が何匹も泳いでいた。私が遊びに行くと、おばさんは池の水辺で食用カエルをさばいている事がよくあった。
そのカエルは池に住んでいて、時々池の縁で見かけることがあった。 私が目を凝らしてみているうちに、少しバタバタしていたカエルは、あれよあれよという間に、半透明のプチプチした刺身のようになった。
 私が和雄ちゃんのお母さんのすることで、目を見張った事がもう一つある。
 おばさんは、家の中の大きなビンにいつもメダカをいっぱい飼っていた。 時々、ガラスのコップに5、6匹移すと水と一緒に一気に飲み込んでしまう。その度に私はキョトンとしておばさんを見つめていた。 私なら、もしメダカをもらったら、飲まないで大切に飼ってあげるのにといつも思っていた。

 和雄ちゃんの家は私にとって行くたびに新鮮な驚きに満ちていた。 おばさんは時々、押入れから大きなチョコレートを取り出して、それを割って私にくれた。 そんな大きなチョコレートの塊が次々と出てくる押入れは魔法の部屋のように思えた。
 時々、和雄ちゃんの家には、黒塗りの大きな自動車が横付けになり、正装したおばさん、和雄ちゃん、良子ちゃんがいそいそと乗り込んで、どこかに出かけた。そんな日は、前日から和雄ちゃんは、「明日は自動車に乗れるんだ」とうきうきしていた。 
 そんな和雄ちゃん達の話しを聞いて、父が、
 「GHQは、あの人達から、自分達の実験の資料を集めているようだ」
と苦々しく母に言うのを聞いたことがある。

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コメント

 二つの文章とも、5、6歳の私の目から見た当時の広島の日常に残っていた、原爆の爪痕を書いた物です。しかし"チョコレート"の方が、毎日遊んでいた隣の男の子と、その母親に関わっていただけに私にとっては、切実で、切ない思い出です。

投稿: あきこ | 2005/02/06 19:05

非人道へのTBは削除せていただきました。で、さらに突っ込むようですが

広島の街     ( 1-11 ) »

におつけになったのではなく、

チョコレート    ( 1-10 )

でよろしいのですか?
いえ確認ですが。

投稿: BigBan | 2005/02/05 22:37

 BigBanさん。TBつける場所、間違えていました。ごめんなさい。"『夕凪の街 桜の国』-穏やかでスローな悲しみ"に付けたつもりでした。やり直すので、以前の消していただけますか。
 

投稿: あきこ | 2005/02/05 18:54

 まず"まにまに"さんの『夕凪の街 桜の風』の紹介文をを読んで、原爆被災者の深い悲しみに思いが巡り、私の広島で過ごした幼児期の幾つかの経験を紹介したくなりました。当時は、ただ事実として見ていた事が、その後の年月の経過の中で、大きな悲劇の一環として見えてきました。
 BigBanサンの"「非人道的」とはどういうことか"は、まにまにさんへのTBで知りました。
 

投稿: あきこ | 2005/02/05 10:00

BigBanです。TBありがとうございます。ただ、記事を少し拝見したのですが、TBをいただいた関連性のようなものが、見えにくいのですが、よろしければコメントいただけますか?

投稿: BigBan | 2005/02/04 11:57

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