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2004/12/11

ク ロ       ( 2-12 )

 猫に関しては、色々と悲しい思いでもある。
 先ほども書いたが、我が家には常時一匹の猫が飼われていた。 その一匹が何かの事情でいなくなると(大抵は老衰で死んだ)、次のは空白の数週間のうちに、誰かが拾ってきた猫に決まった。 後になるが、私が高校生の頃から、家にいた猫 “クロ” は私が拾ってきたものだった。

 母は家族の世話やら何やらで忙しかったので、私が拾ってきた時条件をつけられた。
 「全部、明子ちゃんが自分で世話をするなら、飼ってもいいわ」
 猫の世話をするのは、私も初めてだった。 その真っ黒な捨て猫は、泥で汚れていた。 私は先ず風呂場で石鹸を使ってきれいに洗った。 いかにも小さな子猫は、水で濡れると、ますます小さくなり、消え入りそうな声でミャーミャー鳴いた。 この “猫の入浴” はクロの成長とともに、私にとって一大難事業となっていった。 体は大きくなり、力は強くなる。 ある時など、石鹸を付け終ったと思ったら、窓から外に逃げ出してしまった。 それ以来、クロの入浴中は窓をしっかり閉めることにした。 逃亡予防のほかにもう一つ目的があった。 クロは入浴の間中、まるで私が猫虐待でもしているみたいに、ギャオギャオ大声で鳴き続けるので、私も “世間体” をはばかったのである。

 クロは運動神経抜群の猫だった。 子猫の頃はよく後ろから、歩いている私の肩に飛び乗った。 たまには、乗り損なって、私の背中に爪を立てた。 その痛いこと、私の背中には数本の赤い筋が残った。 裏の家と我が家は1m半程の段差があったが、いとも簡単に飛び上がった。 庭木のてっぺんから顔を覗かせている事も良くあった。 スズメ獲りはクロの得意技だった。 庭の所々にスズメの頭が落ちていた。 最初私はその黒い丸いものを、マツボックリかと思って拾った。
 スズメの頭だと分かった時は、キャと言ってあわてて投げ捨てた。 当時はキャットフードもなく、我が家で肉や魚の残り物がでる事などほとんどなかった。 ご飯に味噌汁の残り、たまにニボシの食事では、クロにとっては物足りなかったのだろう。

 ある時は、山鳩(キジバト)を捕まえた。 この時は私もさすが、クロを山鳩から引き離したが、傷が深かったため、山鳩はすぐに死んでしまった。
 ある日、廊下にあったスリッパの上に、何か灰色っぽい物が乗っていた。 顔を近づけてみると、それは死んだネズミだった。 私は一瞬ドキッとした。 何てことをするの。 でも次の瞬間、私はクロの気持ちが分かったような気がした。
 「ワタシだってニンゲンに役に立つ事できるのヨ。 コレは、ワタシからアキコちゃんへのプレゼント」
 ただ、クロの気持ちが、他の人に誤解されても困るので、私は急いで、そのクロからの贈り物を片づけた。
                             koneko
                                 こねこ

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