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2005/02/14

杭州        ( 4-3 )

 四月上旬の杭州は、芽吹き始めたしだれ柳と、今を盛りと咲き誇るカイドウの中で、どこか日本の早春と重なる華やかさがあった。 私達はガイドさんと、柳がゆれ、白、ピンクと咲き匂う桃の花の中を、春風にふかれて白堤の上を散策していた。 柳の木の周辺は、薄紫色の諸葛菜が一面に咲き乱れ、遠く近く凧が空を泳いでいた。 ガイドの張さんが西湖の案内をしてくれたが、とても博識で面白かった。 張さんが急に思い出したように言った。
 「西施の名前のいわれを知っていますか?」
 「いえ、知りません」
 「西の方に住む施さんという意味なんですよ」

 私は今まで特に考えた事がなかったが、言われてみれば、なるほどと納得した。 天下の美女の名も案外単純なんだなと思った。
 「以前、ガイドした事のある日本のお客さんに、この事を説明したら、ひどく感心されました。 その方は高校で漢文を教えていらしたのですが、『今の今迄、西施は姓が西で、名が施だとばかり思い、生徒にもそう説明してきた。私は何十年もの間、間違った事を言ってきたことになります。今、目からウロコがとれました』とおしゃってました」

 目からウロコがとれたと言えば、私もこの旅行でもう一つの経験がある。
 上海博物館を見学したとき、ある階に“編鐘”と言われる、中国の古代の打楽器が、フロアの大部分を占めるほど、たくさん展示されていた。
 中国において、紀元前の昔、貴族の食事時のバックミュージックを奏でる楽器だったという。 貴族の地位によって、一方向、二方向と増え、最も高位の貴族は、四方向にこの編鐘を配して、食事の間、妙なる音楽を愛でたという。

 私は、その時、以前日本の博物館で見たことのある“銅鐸”を思い出した。
それらはいかにも似ていた。 日本では、古代の祭祀に用いたと考えられているが、その源流に遭遇したと思われた。
 はるかな昔、日本に渡来した人達が、故郷を懐かしんで作ったのかも知れない。または、海の彼方の文化にあこがれた人達が、模倣して作ったのだろうか。
 私達の祖先の息吹が伝わってくる感じがした。

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コメント

 ウェブで諸葛菜の画像を探しているうちに、中国では諸葛菜は"かぶ(蕪)"のことだと知りました。こういうねじれって、結構ありますね。
 つばき(椿)は中国では山茶で、"椿"はまったく別な植物のようです。
 植物なので笑って、直せますが、政治や歴史と関係した言葉だと厄介なこともありますね。正しい翻訳を望みたいものです。

投稿: あきこ | 2005/02/14 15:45

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