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2006/03/31

6.飴泥棒    続

 “飴泥棒”が始まります。私達は、それぞれ適当な枝を握って、台にこびりついた飴をはがしにかかります。でも私には台が高すぎて、いくらがんばっても腕がやっと台の端に届くだけで、硬い飴をはがすなど、まるで無理な話でした。部屋は静まり返り、みんな一心不乱に、飴をはがしています。他の子供たちが、ガンバッテ獲得した、飴の切れ端を次々に口にほおばっているのに、私はひとかけらも取れず、今にも泣き出さんばかりでした。

 このとき、後ろの方から、にぎやかな話し声がしました。工場のおばさんたちが帰ってきたのです。これは私達の“飴採取”の終了を意味していました。他の子は沢山の成果があったのに、私だけ、未だひとかけらも口にしていないのです。

 それまで我慢していた涙が一気に溢れ出しました。

 一人のきれいなお姉さんが、手で私の頭をなで、笑いながらいいました。

「台にこびりついた飴食べたいなら、こんな棒切れじゃダメよ!飴より硬いものを使わないと」

いい終わるや、シャベルを握って、台に付いた固まった飴を力いっぱいはがしました。飴は、シャベルが動くたびにポロポロはがれます。私は背伸びして夢中で拾い、ポケットに詰め込みました。それを見てほかの子も集まってきて、瞬く間に工場は子供達の歓声に包まれました。

「僕にも!僕にも!」

「浩ちゃんばっかしに上げないで、僕にも頂戴!」

飴工場の他のおばさんたちも、やる気満々になり、腕まくりして、シャベルを上手に使って、台上の飴をはがしてくれました。しばらくすると、台はきれいさっぱり、私達のポッケは膨らんでパンパンになりました。

 飴工場から出ると、子供達は一連の奮闘ですっかり疲れきっていたものの、みんな膨らんだポケットをおさえて、意気揚々と家路に着きました。

 私はというと、家に着くや、ベッドの布団にもぐりこむと、直ぐに寝てしまいました。

 どれほど経ったのでしょうか、私は母の叫び声で目が覚めました。私が寝ている間に飴がポケットから出てしまい、暖かな布団の中で溶け出していたのです。清潔な布団カバーや敷布にベットリとこびりついていました。

 こうして飴は殆んど私の口に入ることなく、母がプリプリしながら、洗濯物の山と格闘していた情景は、今でも生き生きと思い出されます。

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コメント

お礼は浩さんに伝えます。
私も原稿をもらって読むのがとても楽しみです。
今後とも暖かいご声援お願いします。

投稿: あきこ | 2006/04/02 19:05

素敵なお話を有難うございます。

投稿: 天野屋 | 2006/04/01 05:14

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