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2006/03/17

4.食いしん坊 (浩さんの物語)

 部隊の兵士は全国各地から来ていました。

夜、一日の緊張した訓練が終わり、兵士達の自由時間になると、ピンポンをしたり、ギターを弾いたりそれぞれ思い思いに時間を過ごします。なかでも人気があったのは、おしゃべりです。いくつもの小グループに分かれ、お国訛り丸出しで、自由気ままに話が弾み、“消灯準備”のラッパが鳴ると、しぶしぶと、それぞれの部屋に引き上げて行きます。

 合図のラッパといっても、学校のチャイムみたいなもので、部隊生活を半年も経験すると、毎日同じように繰り返されるので余り気にならなくなります。少なくとも私にとっては、一日三度のご飯の合図以外は、全然意味のないものでした。

 部隊の生活は、豊かに感じられました。普通の庶民にとって、白米ご飯は言うに及ばず、高粱ご飯もおなかいっぱい食べれない時代でした。しかし部隊では毎日白米粉で作った饅頭(マントウ 中華風蒸しパン)が出されたし、いため野菜のなかには肉片が入っていました。

 ある時、私と母は食堂で兵隊さんと一緒に食事をしていました。私はおかずの中に肉片を見つけました。光を反射して輝き、薄く半透明な、紛れも無い脂身の肉なのです!(当時は赤身より高級とされた)

嬉しくって直ぐに箸でつまみ、飛び上がってみんなに見せびらかしました。


 “見て、見て!私のおかずの中に肉が有ったよ!こんなに大きいよ。”直ぐに、周りの人が言いました。

“本当だ!そんなに大きな肉が入ってたなんて、運がいいね!”そういいながら、私から取るまねをしました。その時、私は本当に取られると思って

“もう食べちゃったよ”と慌てて口の中に押し込み、箸の先端も一緒に食いちぎってしまいました。これには周りの大人たちは大笑いで、母なんか笑いすぎて涙が出たそうです。


それ以後、私は部隊の中で有名になりました。みんな私のことを“浩ちゃん”と呼ばずに“食いしん坊”と呼ぶようになりました。食事の時は、誰か彼か、箸で肉片をつまんで、まるで猫をからかうみたいに

“食いしん坊、これなんだ?”と見せびらかします。私は必死で箸を追いかけるのですが、みんな背が高いので何回飛びついても届きません。

 もちろん、最後にはその肉は私の胃袋に納まることになっていましたが・・・。

                                                                                                      ( 続く )                                   

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