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2006/03/20

4.食いしん坊      続

炊事班の班長の名前は黄富貴といい、父の親友でした。おじさんは、色白ででっぷりとしたお腹で、名前の通りいかにも福福しい顔をしていて、見るたびに、お寺の布袋様を思い出しました。

 父より若く見えましたが本当は、2歳年上でした。黄おじさんは魔法使いの様に、私にたくさんのお肉を何処からか取り出してくれました。それも飛び切り大きいのです。

“よう!浩ちゃん、おじさん何持ってると思う?”

“わぁ!肉だ!”その度に、私は一寸大げさに喜んで見せました。

“この肉食べたい?上手に何か歌ってくれたらあげるよ!”


 私は幼稚園に行った事が無かったので、童謡なんか習った事がありませんでした。そのころ家には大きなラジオはありましたが、ニュースを聞いたり、天気予報を聞くぐらいでしたが、毎日ラジオからは同じような音楽が繰り返し放送されていたので、いつの間にか、覚えていました。子供用の歌は殆んど無く、多くは国や、故郷への思いを歌ったものでした。私はそれらの歌を、ごっちゃに覚えていたまま、一生懸命歌いました。


 黄おじさんは時には部隊の兵士達の愛唱歌を教えてくれましたが、とてもいい声でした。

“日落西山 紅霞飛 ♪ 、 戦士打靶 把營帰 ♪  ・・・・ ”

 これが私の音楽教育の最初の一歩でした。

 ただこのように一生懸命歌い終わった時には、お椀の中の熱々の肉はすっかり冷え切っていました。それでも私はその肉を、スープごと全部食べ尽くしました。

 こんな感じで数ヵ月経ちました。ある時、私が又おわん一杯のぎとぎとしている脂身を食べ終わるや、突然全部戻してしまいました。それ以後、体が肉をぜんぜん受け付けなくなってしまったのです。器の中に肉らしきものを見ただけで吐き気がするのです。

 その結果かどうか、私は今に至るまで、ずっとスリムです。私が肉嫌いのため、身体に脂肪が付かないのだと母は言います。

これは黄おじさんのおかげかもしれません。

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