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2006/03/26

5. 黄河の氾濫

私達家族が来てから、部隊の宿舎近辺は段々にぎやかになってきました。私みたいな軍人の子供が増えた外に、周囲の農家の子供達が沢山押しかけてきました。この農家の子供達との交流は私の世界をとても広げてくれました。

 部隊の敷地内に入ってきて私達と遊んだのは、大体男の子でした。顔は泥だらけで、着ているものは見るからに、お下がりをまた何回もつくろった感じで、いつも鼻水をたらしていました。青洟はゆっくりと鼻の穴から流れ出し、だんだんと勢いを増して唇に達します。もう口に入ると思った瞬間、慣れた様子で、ぺロッと舐めてしまいます。さっきまで鼻水が流れていたところには、2本の黄色っぽい痕跡が残ります。これはその子達にとって一番簡単な鼻水の処理方法でした。


「気持ち悪いよ!」こんな場面を見るたびに、私はしかめつらして言いました。

でも男の子達は口々に言います。

「どうってこと無いよ、鼻水っておいしいんだぜ!お前もなめてみろよ!」

私はやっぱり鼻水をなめる気はしませんでした。

土地の人は、子供の鼻水を“黄河の氾濫”と呼んでいました。子供たちが鼻水を舐めるのも別に珍しい事ではありません。私もだんだんと見慣れてしまい、そのうちになんとも感じなくなりました。

 ある日、私にも鼻水が出てきました。これはチャンスです。私は、ゆっくりと舌を伸ばし、恐る恐る鼻水に近づきました。こんなとこを母に見つかったら、きっと怒られます。でもみんなが、豪快に自分の鼻水を舐めている様子がずっとうらやましかったのです。


「私だってできるよ、私だって!」自分を励ましながら、舌の移動を続けました。

少しずつ少しずつ近づいていきます。

「やった!」私はついに到達しました。本当に思ってもみませんでした。鼻水はしょっぱかったのです。それもあっさりした・・・。私は今でも、あのなんとも言えない味をはっきりと覚えています。大きくなって、初めて海に泳ぎに行った時、海水の味が鼻水の味にそっくりなのを知りました。

皆さんも、うそだと思うなら、自分で試してみてください・・・。

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