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2006/04/24

8.おばあちゃんとにわとり 続

 その頃、私は鶏の言葉がわかりました。おなかがすいた時は、抑えた低音でいつまでもククッと鳴き続けますが、食べ物が目の前に置かれると、とたんに嬉しくてたまらないという感じの、せっかちで、甲高い声に変わります。怒っている時は、低く沈み何かうったえるようでもあり、時には興奮して威嚇しているようでもあります。なかでも私が一番待ち望んでいたのが、卵を産む“予告”でした。母鳥の苦しそうなうめき声を聞くと、私は大喜びで鶏小屋の前に駆けつけると、じっとしゃがみこんで待ち続けます。そうして生み出されるや否や、未だ体温が残って暖かく、殻も柔らかな卵をそっと拾いました。

 家で鶏を飼うというのは、ペットを飼うのとは訳が違います。祖母の家の台所は、そんなに広くなかったので鶏小屋が大半を占めてしまい、祖母が料理していると、小屋から首を伸ばした鶏に、ズボンの裾を突つかれて困っていました。

 狭いのも閉口しましたが、もっと厄介だったのは、糞の始末です。毎朝、家族に朝食を食べさせた後、祖母の最初の仕事が鶏小屋の掃除でした。大きなシャベルで、一日分の糞を掻き出します。この匂いが一種独特で、私にとっては、慣れ親しんだせいか、今では大好きだった祖母の家の懐かしさと分かちがたく結びついています。

 祖母は毎日新鮮な卵をゆでてくれましたが、これは当時としてはとても贅沢な事でした。私が家の前で、石に腰掛けゆっくりとゆで卵の皮を剥いていると、匂いと、私のいかにもおいしそうに食べている様子に引かれて近所の子が集まってきます。

“おいしい?”

“もちろんおいしいよ!”

私は、得意の絶頂です。

“ほんとに?どんな味なの?”みんな熱心に聴きます。

ところが味の描写は、当時四、五歳の私には難しすぎました。でも美味しいと自慢した手前、証明しなければなりません。仕方なく、気前いい振りをして少し割ってあげます。

“味見したら分かるよ!”その子は食べ終わると、おおげさに

“うん、ほんとにおいしいね!”といいます。

 二日目、私は例のとうり、みんなの前でゆで卵を食べ、みんなも私を取り巻いて“無邪気”に聞きます。“どんな味?”・・・・・・・・・以下同文。これが毎日続きました。

 祖母は、いつも私のそばで笑いながら見ていましたが、時には

“お前はお馬鹿さんだね!”といいました。今考えると、確かに私は“お馬鹿さん”だったようです。



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    大田和美さん、おめでとうございます。

 政治家は、選ばれてからが本当の勝負だと思います。若さにはエネルギーがあります。各方面の経験と知恵を取り入れ、有権者の期待を裏切ることなく、がんばって下さい。

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