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2006/05/12

10.妹の誕生

妹の誕生は私にとっては、大事件でした。私はどうも歴史は苦手で、歴代の王朝の交替は言うに及ばず、近現代史も覚えなければならない事が多すぎて頭の中が混乱してしまいます。

 しかし、1978年に起こった事は、一生忘れる事は無いと思います。

 19785月、妹が張家の屋敷で生まれました。その年の10月、中国は“計画出産”政策を始めましたが、私が中学に入学するぐらいまで、このことをずっと恨めしく思っていました。計画出産の実施が遅すぎたのです。もしあと一年でも早く実施されていたら家族の愛情は私が独り占めできていたのです。当時の私は、本当に恥ずかしいぐらい自己中心的でした。

 私が祖母のうちに預けられている間、母と父は休日に時たま会いに来るだけでした。私も祖母をはじめ、三人のおじ、三人のおば皆とても良くしてくれたので、すっかり満足していて、母の体の変化など少しも気が付きませんでした。ある日突然、一番下のおばが興奮気味に外から駆け込んで来ると、大声で叫びました。

“お姉ちゃんが4キログラムもある女の子を生んだよ!お姉ちゃんも赤ちゃんも元気だって。”

 その時、私は他の部屋で絵本を見ていたのですが、おばの嬉しそうな声を聞いて、これは何かとてもいい事があったに違いない、お祝いのご馳走にありつけるかもしれないと一人合点して、絵本を投げ捨て、祖母のそばに駆けつけました。

“どうしたの?”祖母はベッドのそばに腰掛けて、おばの話に応じながら、いつものように私を抱き上げてくれました。

“良かった、良かった”そしてゆっくりと、噛み含める様に私に言いました。

“浩ちゃんのママは浩ちゃんに妹を生んでくれたよ。浩ちゃん、これからはママが妹の世話をするのを手伝ってあげるのよ。妹が大きくなったら一緒に遊べるよ。浩ちゃんにきょうだいができておばあちゃんは本当に安心したよ”

 おばは、せっかちにさっきの話の続きをします。

“その子、きっと美人になるよ。浩ちゃんが生まれた時は、顔が赤くて、痩せてて、顔中しわだらけでおばあさんみたいだったでしょう。今度の子はぜんぜん違うらしいよ。色白でふっくらしていて、目もぱっちりしてるんだって。それに元気に動き回るらしいよ”

 祖母は私の髪の毛をゆっくりなでつけながら、微笑んでうなずいています。

 それなのに、私はちっとも嬉しくありませんでした。みんながこんなに喜んでいるのに、何でか私はちっともいいことに思えなかったのです。

                  ( 続く)

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