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2006/06/02

11.春節 (浩さんの物語)

 中国での春節は日本のお正月に当たります。旧暦の11日なので、新暦では1月の終わりから2月にかけて、その年により変わります。

私が日本に来るまで、春節はいつも祖母の家で過ごしました。一口に春節といっても、幼い日の思い出と、大きくなってからの経験では外見も気持ちもずいぶんと変化しました。幼いころの春節は、私の記憶の中では一番大切な宝物です。時間は巻き戻しができませんし、失われた記憶は取り戻せませんが、それでも思い出すたびに幸せな気分になります。

 当時の私は一年中、春節を待ちわびていました。夏、近所の子が新しいスカートをはき、きれいなリボンをつけているのを見るとうらやましくて、もし今が春節なら私も同じような可愛らしいスカートをおねだりできるのにな、と思いました。秋に友達が門の前のいすに座り、大きなぶどうの房を見せびらかしながらおいしそうに食べているのを見ると、もし秋に春節があったなら、私も葡萄を食べられるのにと恨めしく思いました。

 このようにずっと待ちわびた末に、雪が降る季節が到来します。でも暦の最後をめくっても未だ春節は来てくれません。しかし町の中は、日を追ってにぎやかになります。雪の積もった道の両側には、爆竹や春聯売りがずらっと並び、鮮やかな紅が白い雪に映えて心の中まであったかにしてくれます。糖葫芦売りは色々な糖葫芦を、自転車の後ろの荷台の藁の束に突き刺し、路地裏を走り回ります。

  

 祖母は、私に新しい洋服を作ってくれます。

 おばさんは、わずかなお小遣いをやりくりして、写真屋さんで写真を撮ってくれます。

 祖父は、魚や、肉や、野菜の買出しに市場に連れていってくれます。

 1週間ぐらい前から祖母は、正月料理の準備を始めますが、中でも万頭、豆包作りはなかなか大変でした。万頭は毎年、百八十個前後蒸したと思います。当然その頃家に冷蔵庫はありませんでしたが、東北地方の冬は天然の冷凍庫のようなもので、屋外に二十分も出しておけば、カチカチに凍ってしまうのです。冷凍後、大きな袋に容れておき、お正月には毎日十数個取り出し又蒸して食べます。一つ一つの真っ白な万頭の上には紅い棗が載っていて、きれいだし、おいしいし、栄養もあるとの事でした。

                         ( 続く)

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