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2006/06/05

11.春節    続

 ついに待ちに待った大晦日がやってきます。朝早く起きると、お風呂屋さんに連れて行かれます。お風呂屋さんはそんなに広くないのに、この日は誰もが、きれいさっぱりとしたいので、超満員になります、その上いつもより念入りに洗うので、蛇口の前には長い列ができ、数十分待たねばなりませんでした。

 

 風呂で身体を清潔にした後、家に帰ると上から下まで、全部新調の衣服に着替えます。特に靴下は絶対に新しくないとダメなのでした。祖母によると、大晦日に、新しい靴下を履いて、しっかりと地面を踏みしめて歩き“小人 (日本の貧乏神に似ている) ”を踏み潰さなければならないのでした。東北地方では、目には見えないこの小人が人の内部で悪さをして不幸をもたらすと信じられていました。そんなわけで、新年にはみんな新しい履物を履き、気分一新を図りました。

 午後からは、続々とお客さんが押し寄せてきます。遠くの親戚も、祖母祖父の友人も来ますし、おじさん、おばさんの友達も皆何がしかの贈り物を持ってきます。

“新年おめでとうございます!”みんな口々に言いながら入ってくるので、ただでさえ広くない祖母の家は、芋の子洗い状態になります。

 当然祖母も、礼を尽くし、子供達にお年賀を持たせ、暗くなる前に、近隣への挨拶回りをします。この時間帯、各家々は本当ににぎやかです。これは当然その後何日も続きます。

 もしあなたが、この時期、家々には贈り物の山ができていると想像したら、それは門外漢です。通常、祖母はその日もらった贈り物は、直ぐに子供の目の届かないところで違う袋に入れ替え、他の家への贈り物にするのでした。結果として、春節の喧騒の後には、普通は何の贈り物も残っていないのでした。

 春節のお菓子の包装は本当に見事です。伝統的な図柄は次のようなものです。

  嫦娥奔月・・・嫦娥が衣をなびかせて、ウサギを抱えて月に飛んで行く。

  八仙過海・・・八人の仙人が各自の得意技を披露しながら、大海原を航海する。 (七福神の原型?)

  福星高照・・・寿星(福禄寿)が手に大きな桃を持ち、鶴や蓮や金元宝(中国古代の金貨)に囲まれて、にこやかに笑っている。

 しかし私の関心は、そのきれいな包装紙の中身に集中します。一度だけ、祖母がその箱を開けてくれた事がありました。丁寧に包装紙を開けると油がにじんだ、白い紙の箱が出てきます。その段階でお菓子のなんともいえない良い匂いがして直ぐに何人かが集まってきました。何本もの手で一斉に紙の箱を開けたのですが・・・・。皆シーンとしてしまいました。いかにも美しく作られたそのお菓子は、一瞬緑色に見えたのです。一面にアオカビが生えていたのでした。多分このお菓子は、この家に来るまでに随分長旅をしていたのでしょう。 

 みんながっかりしてその場を去りました。祖母はそのお菓子を一個つまんで、どこか未だ食べられるところが残ってないか丁寧に調べましたが、又そっと元へ戻します。

“やれやれ。さあ、お正月だよ!餃子を作ろうね!お正月のお菓子は、見てるだけ、食べる物じゃないよ!”

 祖母は声をはり上げます。

 さあ、私達の新年の始まりです!

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