« キスゲとカンゾウ | トップページ | 12.お年玉 »

2006/06/12

キスゲとカンゾウ  続

新潟港から連絡船で佐渡に渡った。行きはジェットフォイルに乗り、約1時間で到着。帰りはカーフェリーで2時間半。その差、1時間半のお値段3000円余。正に時は金なりで分かりやすい。忙しい人、船酔いが心配な人には朗報だろう。ただ私みたいに時間に関してわずらう事の無い人間にとっては、乗船中安全のためずっとシートベルト着用のジェットフォイルより、自由に船内が歩き回れ、甲板に出たり、カモメに餌を上げたりできるカーフェリーのほうが楽しかった。

翌日朝のうちは良く晴れていて、空も青く、日本海の少し暗い海面の色とのコントラストを楽しみつつ島の北部の大野亀を目指した。

のどかな車窓の風景にうとうとしかけていたら、海岸の岩にへばりつくように咲いている橙色の花が岩ユリとの説明があり、いっぺんに体中しゃきっとした。園芸種のスカシユリの母種だ。大波が来たら、さらわれそうなごつごつした岩肌に必死にしがみつき鮮やかな大輪の花を咲かせている。

Kisuge それからしばらくして、目的地に着いた。切り立った岩壁に接した、なだらかな起伏の台地一面があのニッコウキスゲを思わせるやさしい黄色の花で覆われていた。荒々しい海を背景に、のびのびと目の覚めるような黄色の世界が広がっていた。未だ4分咲きということなので、これが満開になったら本当に黄色のカーペットに覆われたようになるのだろう。海沿いの遊歩道に沿って歩いているうちに、空がにわかに掻き曇り、寒いくらいに冷えてきたかと思うと雨がぱらついてきた。本降りになる前にあわてて引き上げた。外海に面した土地の気候の変化は厳しい。黄花カンゾウはたくましくこの地に適応してきたのだろう。一株に付く花数もキスゲ属の中では多いようだ。もう一度満開のとき、青空をバックにゆっくりと見てみたいと思った。

それにしても何故、このキスゲを黄花カンゾウと名づけたのだろう。系統的には佐渡キスゲとしたほうが、日光キスゲや武蔵野キスゲとの関連からふさわしいのではないか。ついでに言わせてもらえば、北海道に見られる蝦夷カンゾウも蝦夷キスゲのほうが分かりやすい。

そもそもカンゾウ(萱草)は、先史時代中国から渡来したという。今でも中国では蕾の干したものが金針菜として日常的に食べられているし、不眠症の薬としても用いられている。花は詩にも読まれ、古来から好まれてきたようだ。

日本には、稲作文化がもたらされた頃、渡来人と共にやってきて、在来種のキスゲが温暖化により高山や北国へ後退した空白地に大いに広がっていったようだ。


身近では、野カンゾウと藪カンゾウが見られるが、藪カンゾウなどは八重咲きでとても野生種とは思えない華麗さだ。その昔渡来人が故郷を後にする時、それまで大切にしていた花を携えて異国の地に渡ってきて、身の回りに植えて望郷の念を慰めていたのかもしれない。何はともあれ、藪カンゾウにとって、日本はとても住み心地が良かったのだと思う。気候は穏やかで、新しく開墾された農地が広がり、人々も大切にしてくれた。

藪カンゾウは雄しべ、雌しべが花弁化した、いわゆる八重咲きのため種子ができない。株分けで増えていくため川や海を自力で渡る事ができない。今では日本全国、いたるところで普通に見る事ができる事実からも、いかに日本人の生活に溶け込んでいたか、うかがい知る事ができる。

しかし、都市化の波は容赦ない。最近は郊外でも余り大切に扱われていないように見える。私の知る限り、雑草扱いである。近所の里山でも、年数回刈り込まれるのでついぞ花の咲いたのを見た事がない。川の土手に群生していても、ススキなどと同様、容赦の無い刈り込み対象となっている。せめて花が咲き終わってから刈り込んで欲しいとひそかに願っている。

特に野カンゾウを近頃あまり見かけなくなった。メダカのように、ある日レッドデータブックに登録された・・・、みたいにならない事を願う。何と言っても日本の稲作文明をずっと私達祖先と共に歩んできた花なのだから。

注  キスゲ(黄菅)は、花が黄色で葉がスゲ()の仲間に似ている事による。

   中国名、カンゾウ(萱草)の萱は忘れるという意味の諼と発音が同じであり諼草とも書かれる。漢方薬では抗鬱薬として用いられ、憂いを忘れさせてくれる花とされたようだ。親しい人と離れている寂しさを忘れたい気持ちが託されて古来詩歌のなかで多用されている。


______________________________________________


今日夜の、W杯日本オーストラリア戦、今からどきどきします。

勝敗は時の運。選手の皆さんも、応援する私達も、悔いの残らない一戦にしたいですね。

|

« キスゲとカンゾウ | トップページ | 12.お年玉 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: キスゲとカンゾウ  続:

« キスゲとカンゾウ | トップページ | 12.お年玉 »