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2006/07/14

14.爆竹遊び  続

 思ったとおり、神様を迎える準備はすっかり整っていました。台所では水餃子用のお湯は沸き立っていて、凍った餃子が入れるばかりになって脇に置いてあります。

“全員ちゃんと家に戻っているかい?”祖母は時計を見ながら聞きました。

私は小さな声でつぶやきました。

“永生がまだ戻ってないかもしれないよ・・・”私はそのとき、何時間も外にいて、体中氷のように冷え切っていたのと、疲れ切っていたのが合わさって、暖かい部屋の中でとても眠くなっていたのです。私の声は周りの喧騒の中でかき消されてしまいました。

 “十、九、八、・・・・・”テレビでは新年を迎えるカウントダウンが始まりました。おじさん達はマッチを握り爆竹に火をつける体勢に入りました。おばさん達も、鍋に餃子を入れるばかりです。“・・・三、二、一!”テレビから新年の鐘の音が響きます。同時に耳を聾すばかりに爆竹が鳴り響きます。一時(いっとき)、外は紅(くれない)に包まれます。

 “餃子の準備ができました!神様家にいらして召し上がってください!”おばさんが大声で叫びながら餃子を鍋に入れます。 祖母は玄関の戸を開き、爆竹のにぎやかな音と、餃子のおいしそうな匂いで神様を家に招きいれます。私も付いていって、神様が空から降りてくるのを見ようと待ち構えます。でも空はいつもどおりの空で何の変化も起こりませんでした。

 餃子が煮えて、入り口近くに設けられたテーブルには山盛りに神様用の餃子が置かれ、お酒も並々と注がれます。

 あわただしい時が過ぎ、神様も家の中に入られたころあいを見計らって祖母は、玄関の戸締りをします。そして重々しく宣言します。

“明日の朝まで誰も玄関を開けてはいけません。神様が家においでになるのですから、気が変わって外に出られないようにしなくちゃね!”

 皆やれやれ一段落といった表情でそれぞれ椅子に腰掛け、餃子を食べ始めようとしました。この時、誰かが叫びました。

“永生は?何でここに永生がいないの?”

“永生はどうした?永生は未だ戻っていなかったのか?”部屋中再度爆竹が点火したみたいに大騒ぎになりました。

 私は一日の疲れからそれまでうとうとしていました。目はぼんやり餃子を見ているのですが、頭の中には奇妙な形をした神様が浮かんでいたのですが、はっと現実に戻されました。

“永生は未だ外だと思うよ・・・”

                                                 ( 続く)

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