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2006/09/04

猫じゃらし

 今朝も早朝散歩してきた。太陽がだいぶ高くなってきても空気はひんやりとして、秋の訪れを感じる。エノコロ草が道端のいたるところであの独特のふっくらした穂を垂れていた。


Nekojyarashi  私が小さな頃は猫じゃらしと呼んでいた。猫に対する人々の暖かな気持ちが感じられる。文字通り、これを猫、特に子猫の前で揺らすといつまでも飽きずにじゃれ付いてくるので、大抵私のほうが根負けしてやめてしまっていた。


猫と人間の共同生活の歴史は古い。最初は、穀物を食べるネズミを採ってくれる事から生活のパートナーとして飼われはじめたのだろう。その働きを感謝されて、エジプトなどでは神にまで上り詰めている。基本的に農耕民であった日本人にとっても、猫は大事な家族の一員とみなされてきたように思われる。

名前は使用する人々の文化を反映するようだ。エノコロ草の場合も中国では狗尾草と呼ばれるそうだ。言われてみれば、子犬の尻尾みたいに見えてくるから面白い。中国社会に於ける犬への親しみが感じられる。一部の地域では食料ともされるというが、本質的には、牧畜民の犬への親近感が伝わってくる。中国でも、牧畜文化の影響が強い北方での命名のような気がする。

以前読んだアメリカの開拓時代を描いた『大草原の小さな家』の中で、子犬にはすぐにジャックと言う名前がつけられ、家族同様の愛情が感じられるのに、子猫をネズミ対策としてもらってきてもキテイー(子猫)という一般名詞でチラッと描写されているだけだった。『我輩は猫である』の“名前は未だない・・・”状態である。ヨーロッパ人が、長い間牧畜文化に軸足が在った名残かもしれない。ちなみにエノコロ草を英語ではFoxtail grass (狐の尻尾草)というらしい。

話はもどってエノコロ草のエノコロとは何かと調べてみた。検索により以下のことを知った。『日本国語大辞典』によると、石ころは石子+ろであり、犬ころは犬子+ろという。この“ろ”は価値の低いとみなしたものにつけられるという。この場合、子は名刺の後ろにつけた、扇子、障子、餃子などと同様な接尾語である。エノはイヌ(犬)がなまったものであるという。この語感からすると余りイヌに好意的でない。事実、植物の名前に関していえば犬は散々である。

犬マキ(槙)、犬ザクラ())、犬ビワ(枇杷)、犬タデ()、犬ゴマ(胡麻)・・・・と人間にとって余り役に立たないものの代名詞のような扱いである。犬に対して何かうらみでも有るのではないかとさえ感じてしまう。少なくとも牧畜文化圏では考えられない。

ともあれエノコロ草、猫じゃらしと両極端の名前を持つこの植物はとても可愛らしく、また秋の到来を告げてくれるので私は好きだ。

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