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2007/03/05

“あなたを忘れない”

これは昨年、暮れも押し迫ったころ新聞広告で目にした映画の題名である。新大久保で2001年1月に起こったあの出来事の映画化という。ああそんな事があったな。世を挙げて自己中心の殺伐たる空気が淀んでいたあの時代、線路に転落した人を救おうとして、日本人と韓国の青年が亡くなった。悲しみと同時に、なんともいえぬ清涼の風が心を吹き抜けていった。


あれからもう6年も経ったのか・・・・。犠牲者のご家族の方たちは、悲しみから立ち直られたのだろうか・・・・。その後新大久保につくられたという慰霊碑を一度見に行ってみようかな・・・。

色々な考えが頭のなかを駆け巡ったが、その映画を見ようという気は起こらなかった。事実の存在感が余りに大きいので、下手にいじくって欲しくないという気持があったのかもしれない。

年末、年始とあわただしさのなかで、この映画の事は忘れてしまっていた。それが突如、わざわざ新宿まで見に出かけることになったのは、友人の誘いによる。

“無料券があるの。有効期間もう直ぐ切れるから、よかったら見にいきましょうよ!”

無料、期限切れ迫る…この言葉は利いた。さっそく私は新宿の歌舞伎町近辺の映画館に足を運んでいた。

危惧していたような、プロパガンダ調も余り感じられず、素直に物語に入っていけた。日本に来た一人の韓国人留学生が、それなりの苦労を経験していく中で、一人の日本人女性との愛をはぐくみ・・・・・ああ、しかし私達は結果を知っているのだ。この恋が決して実らない事を・・・。

後半は涙が次から次に頬を伝い、ぬぐってもぬぐってもあふれ出て、口を押さえ嗚咽を飲み込んだ。最期の場面を見終わった後もずっとエンディングロールを見ていた。イ・スヒョン(李秀賢)さんの死が切なかった。突然愛する人を失った人々の気持ちが痛いように伝わってきた。がそれ以上に人間への信頼を呼び覚まされた。

この文章を書くにあたって、他の人の意見も参考にしようと思って、ユーザーレビューを覗いてみたら意外に辛らつな批評が多いのにビックリした。どうやら親しくなった日本人女性とその家族に関してはフィクションだったみたいで、私もそれを知った時、拍子抜けしてしまった。あの時流した涙はナンだったのだろう。

といって私の気持ちは余り変わらなかった。韓国に付き合っていた女性がいたという。その女性の悲しみは、映画のなかの日本人女性の悲しみに決して引けは取らないものだっただろう。ご両親の悲しみは、察して余りある。

一方ユーザーレビューで批判している人の意見のなかに同感できるものもあった。このような重い、感動的出来事を、安易に脚色して、商業ベースの娯楽作品にすべきでない事、もしどうしても作りたかったなら、“李青年の事跡を忘れたくないので物語にしました。内容にはフィクションが含まれています”と明示すべきであったと思う。

とはいっても作品に流れている日本と韓国の友好を望む気持ちにはさほど抵抗を感じなかった。35年にわたる植民地政策のなかで日本がやってきた数々の過ちは歴史的事実なのだし、過去の負の遺産を乗り越える努力は、日本側が本来は誠心誠意やるべきものだと思う。

しかしあえて言えば、この種の話は、余り美談化して欲しくない。その事跡に感動した人の中から類似の行為を行う人が出てきて、かけがえのない命をなくして欲しくないし、その人の周囲にいつまでもぬぐえない悲しみを生じさせないで欲しいからだ。

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