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2016/10/21

16 大叔父

 

小学校に入学して、勉強についていけなかったことはひとまず置いておくとして“昼ごはんがまず大きな問題でした。当時はまだ給食がありません。その代わり、学校には大きなおかまが用意されていて、その中に大きな鉄製のかごがあって、かご毎にクラス名が書かれていました。各自自分のアルマイトの大きな弁当箱をその中に入れておきます。昼になると、先生は当番の生徒に、そのホカホカになった、弁当の入ったかごを教室まで運ばせます。ごはん時の教室のにぎやかさは言うまでもありません。

 

私は大叔父の縁で、ちょっと特別待遇をしてもらいました。毎朝、私は研いだお米に、少しの醤油と、ひき肉とねぎのみじん切りが入ったお弁当箱を、職員室で待っていた大叔父に渡します。すると大叔父は、それを職員用の小ぶりのおかまに紛れ込ましてくれます。

出来上がった、醤油いろに輝き、肉の香りが漂ったご飯は、当時の子供たちにとっては垂涎の的でした。

 昼ごはんが終わると、大叔父は毎日、5分をアイスキャンデイ代として渡してくれます。当時母の月給は十数元(1元は100分)だったので、こんなお嬢様みたいな贅沢をさせる余裕はありませんでした。

 ある日の昼休みのことです。大叔父のくれた5分を握って、ちょうどアイスキャンデイを買いに出かけようとしていると、一人の若い女の先生が私を呼び止めました。先生は仕事が忙しくて、昼ご飯を食べ損ねたのでパンを一つ、ついでに買ってきてほしいとのことです。当時パンは一角(10分)でした。先生のお手伝いができるので、私は大喜びでした。学校の片隅にある売店で、私の顔より一回り大きな黒パンを一つ買いました。

 先生のためにこのパンを買うまで、私は一度もパンを食べたことがありませんでした。手に持った柔らかなパンからは、甘い香りが漂ってきます。私はそっと鼻に近づけ、その香りをかぎました。なんておいしそう!思わず手に力が入って”プチ”。ほんのりと香ばしい麦の香りが広がりました。

 ダメ!人のものをとっちゃダメ。大叔父がいつも言ってたじゃない。

ダメ!人のものを取ったら、おまわりさんにつかまるって、先生がいつも教えてくれたじゃない。

ダメ!ダメ!ダメ!!

でも口は言うことを聞かず、パンに向かっていきます。ちょっとずつかじってしまいました。

その何とも言えない、夢見心地の経験は、今でも生々しく思い出すことができます。

売店から職員室までは、たいして長くない廊下があるだけです。でも私にとってそれは、とても長く感じられました。初めてのパンを先生に渡さなければならなくなった時、なんだか先生が、もともと私のものだったのに、無理に取り上げているように感じて泣きそうになりました。後でこのことを知って、大叔父は先生に謝ってくれるとともに、やってはいけないことは、どんなに誘惑が強くても絶対にやってはダメだと教えてくれました。

 入学当初は、私の行動はすべて大叔父にゆだねられていました。大叔父は何かにつけ教室の窓際を通っては、私を探します。見つけると、ちょっとうなずくと行ってしまいます。私はというと、しょっちゅう先生に注意されて、立たされています。大叔父が様子を見に来るたびに私は膝をちょっとかがめます。もともとみんなより小さかったので、そうすることでみんなと同じように椅子に座っているように見えると思ったからです。大叔父も何も言わないので、お大叔父をだませたと思っていました。

でも後になって、母と大叔父との何気ない会話の中で、大叔父はみんなお見通しだったことを知りました。

                             ( 続く )

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