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2017/01/28

22  農村へ  続々

中国には“肥水不流外人田”(良いものは、他人に渡さない)ということわざがあります。この言葉は、小学校の教科書で見たのですが、要するに自分達の利益をむざむざ他人に渡さないという意味だと思います。

農村で生活していて、この言葉のもともとの意味をしっかり体得できました。

 

おじさんは家の庭に簡単な便所を作りました。もしそこから、強烈なにおいがしなかったら、そもそも便所と気が付かないようなものでした。

 

どんなに簡単かというと、庭に大して深くない穴を掘り、上に広めの二枚の板を渡しただけです。でもいくら自分の庭の簡易便所とはいっても少しは遮蔽物が必要です。

そこでおじさんは、畑で干してあったトウモロコシの茎を抱えてくると、麻縄で小さな束をたくさん作り、それで周囲を囲みました。

これで高さ1メートルほどの囲いのある、屋根のない簡易便所が完成です。

 

便所の中身がいっぱいになったら、叔父さんは大きな桶にくみ取って、天秤で担いで、自分の家のトウモロコシや野菜畑に撒きます。

 

なあんだ、“肥水”って自分の家のおしっこやうんちのことだったんだ!

私は突然疑問が解けました。しばらくは自分の頭の良さにうかれていました。

 

でも実際のところ、この簡易便所に町から来た私はなかなか慣れることができませんでした。

まず囲いが低すぎて下半身がやっと隠れるだけです。自分のうちの庭なので、見られてもどうってこともないのですが、このような便所は、村のいたるところにあります。中には作られてからだいぶたって、風雨にさらされ、そこかしこ隙間ができているのもあります。

そんなことはお構いなしに、村のおばさんたちは用を足しながら、そばを行きかう人とおしゃべりします。

 

“どこへ行くの?”

“ちょっとそこまで。”

“食事済んだ?”

“まだよ。”

“夕食は何にするの?”

 

 

“不流外人田”

賢い私は、この語句も理解できました!あちこちに便所があるのは“肥水”を無駄にしないためなんだ!

 

便所に関して、私にはもう一つ忘れられない出来事がありました。

東北地方の冬は、ひとたび雪が降りだすと、まず数日降り続き、1メートルぐらい積もります。屋根のない便所も当然雪が積もります。おじさんは時々雪かきするのですが、足置きの板は、滑りやすくなります。

ある大雪の後のこと、私はうっかりして足を踏み外し、下の穴に落ちてしまいました。私はびっくりして

“助けて!便所に落ちちゃったよ”とさけび、必死に上の方へよじ登りました。

幸い、穴はそれほど深くなく、零下30度の世界では、何もかもみんな凍り付いています。足元も固く凍り付き、何とかはい出たときに衣服は全然よごれていませんでした。

 

農村の生活は、まさに自然体でした。

お腹がすいたら食べる。

 どんぶりをもって、入り口に座って通りがかりの人と世間話をしながら食べる。机を持ち出し、ハエを追い払いながら、大声でおしゃべりし、時には酒をちびちびやる。またある時は、おかずをどんぶりに空けて、両手でどんぶりを持ち、箸を耳に挟んで、隣のうちまで出かけ、ご機嫌でおしゃべりしながら食べる。

 眠くなったら眠る。

それが草むらでも、田のあぜ道でも全くお構いなしでした。(もちろん冬は例外です。)

 

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