2004/12/19

囲碁熱      ( 2-15 )

 上の姉が、大学で “碁” を覚えてきて、父に相手を頼んでいた。 それを見ていた下の弟や妹達の間に囲碁熱が蔓延した。 私も暇さえあれば、姉や兄と碁を打った。 私達はまったくの素人で、手探り状態だった。 初めの頃の私達の碁は一見、挟み将棋の様だった。 真ん中の線をはさんで、代わりばんこに打っていく。 二本の白黒の線が両端に到達すると、それで、大体二分できたような気になった。 次に相手陣地に切込んでいく。 勝敗はオセロのように、生きるか死ぬかであり、何百目の差がつくのは日常茶飯事だった。 その内にだんだん、所謂 “碁” らしい布陣に変わっていった。 生か死かではなく、陣地の大小が主要な争点になってきた。

 この頃になると、父の暇な時を見つければ、誰か彼か相手をしてもらうようになった。 私が初めて相手をしてもらった時は、井目風鈴といって13目、主要な所に石を置いてから始めた。
 しかし、父は決して私の陣地を殺そうとはしなかった。 私の布石は、穴だらけであり、父がその気になればどれ一つとして生き残れなかったと思う。 が父は、私を一人前の “碁打ち” として扱い、無理のないところに打ってくれた。 だから父との勝敗は驚くほど差が少なかった。
 だが、決して勝てなかった。 そのうち、私の置き石は井目になり、四つに減った。 でも父には勝てなかった。 父は素人ではあったが、後に四段の免状をもらった。
  「もっと上は、お金の問題だ」
 実力があっても、免状をもらうためには、かなりの額のお金が必要になるらしかった。
父には一生、そんな金銭的余裕は無かった。

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